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「尾崎翠を読む」3冊のこと

「尾崎翠を読む」講演編Ⅰ・Ⅱ 新発見資料 親族寄稿 論文編 尾崎翠フォーラム実行委員会編集 今井書店
が、刊行されました。

20160324尾崎

尾崎翠の出身地・鳥取で2001年から昨年まで毎年「尾崎翠フォーラム」というイベントが開催され、各回ごとに報告書が発行されていました。
その報告書の主なものを再編集したもので、昨年の15回で幕を閉じたフォーラムの集大成ともいえます。

20160324尾崎2

このフォーラムの大きな特徴は、3冊目に親族寄稿とあるように、親族や実行委員を始めとする鳥取の人々など、作家と親しかったり、同じ土地に生き、同じ景色を見、同じ水を飲んだ人々が大きくかかわっていることです。
作家の人柄や土地の空気などは、いくらブッキッシュな知識を積上げても、なかなかわからないものです。

尾崎翠は、1920年代から30年代にかけて、文学史的には新感覚派から新興芸術派の時代、いくつかの時代を超える珠玉の作品を書くが、薬に依存するようになり幻覚を見るようになるにいたって、鳥取に連れもどされる。
その後は、創作をはなれ、鳥取で一生を終えた。
という略しすぎの略歴からは、鳥取に連れ帰った長兄が軍人だったこともあり、「家父長制の犠牲になった悲劇の天才」といったイメージが生まれてきます。

しかし、親族や地元の人の目からみるとどうも違う。
鳥取での後半生は、決して座敷牢に幽閉されていたわけではなく、生活者として元気に暮らしていたようです。
そして、作風から想像される小柄で繊細なタイプではなく、大柄で肝っ玉母さんふう、かつドライというか合理的な考えをする人だったようです。

また、このフォーラムでは、「第七官界彷徨」の重要な脇役ともいうべきコケの研究者の講演や同時代の映画を弁士つきで上映したり、シンガーソングライターのミニコンサートがあったり、一般の学会では考えられない程バラエティに富んでいます。
もちろん、それぞれが尾崎翠につながっていくのですが、こんな柔軟さがフォーラムの魅力の一つでした。

最終回となった昨年の講演は、音を聞いて色を感じるといった「共感覚」をキーに宮沢賢治の作品と比較したものでした。
同じ1896年生まれの二人に「第七官」にも通じる「感覚」についての共通点があるとしたら、興味深いものです。

もう一人1896年生まれの村山槐多は早く亡くなったからにせよ、生没年が同じ久野豊彦や、新興芸術派の代表作家ともいうべき龍胆寺雄なども文学・創作から離れていきました。
また稲垣足穂が長い雌伏を余儀なくされていたのは、よく知られています。

何年かさかのぼりますが、美術界でも同じように、村山知義を中心に三科やMAVOなどで活躍した作家たちが美術から離れていきました。(美術の場合は、時代が少し早かったせいか、芸術の前衛から政治の前衛へ、プロレタリア美術に流れていったひとたちもいます。)

時代が戦争に向かってきな臭くなってきたということもあるかもしれませんが、何より彼らの作品が時代のはるか先を行くものだったからにちがいありません。
今やっと、時代が追いついたというところでしょうか。

さらに、宮沢賢治=農学、久野豊彦=経済学、龍胆寺雄=医学といったように様々なバックグラウンドをもった作家たちが活躍しています。
また、映画や写真・蓄音機・ラジオなどメディアが大きく広がり、実験的な作品が作られたのもこの時代の特徴でしょう。

フォーラムの成果がこうして3冊にまとめられ入手しやすくなることで、この時代の文学や芸術の恐ろしく多様な可能性について、まだ途についたばかりの研究に大きく貢献するものと信じます。
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